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執筆者の写真就労移行支援ひかり

適応障害

① 適応障害とは

適応障害とは、生活の中で生じるさまざまなストレスにうまく対処することができず、抑うつや不安感などの精神症状が現れて日常生活に支障をきたす病気のことである。

ICD-10(世界保健機構の診断ガイドライン)では、原因となるストレスが生じてから1か月以内(米国精神医学会のDSM5では3か月以内)に発症し、ストレスが解消してから6か月以内に症状が改善するとされているが、ストレスが長く続く場合には長期間続くこともある。

② 発症の原因

適応障害は、ストレスなどの外因的な要素と、ストレスに対する対処力や本来の性格などの内因的な要素が組み合わさることで発症する。それぞれの要素には以下のようなものが挙げられる。

•外因的な要素

家庭や学校、職場での環境の変化や人間関係の悪化が原因となることが多いが、災害や親しい人との離別、本人の健康問題などが誘因となることもある。他者にとっては些細なことと思われるような出来事であっても、重大な症状を生じることがある。

•内因的な要素

社会生活を送るうえでストレスを完全に排除することは困難であり、誰にでもストレスはあるものだが、些細なストレスで適応障害を発症する人もいれば、大きなストレスが生じても何ら変わることなく社会生活を送る人もいる。これは、元来の性格や考え方によるストレスへの耐性の違いなどが影響すると考えられる。

症状

適応障害の症状はうつ病や不安障害などと類似しているが、これらの病気の診断基準に明確に当てはまる場合、一般的にはそちらの診断が優先される。

例:明瞭な環境変化があり、その状況に“適応”できずにうつ状態になった場合

また、適応障害と他の精神疾患を明確に区別できない場合もあり、

発症当初は適応障害と診断されても、経過を追ううちにうつ病や統合失調症、不安障害など診断名が変わることもある。

ICD-10(世界保健機構の診断ガイドライン)では、適応障害の診断基準を、「ストレス因により引き起こされる情緒面や行動面の症状で、社会的機能が著しく障害されている状態」 と定義している。

情緒面の症状とは、抑うつ気分や不安感、感情の高ぶり、集中力の低下などが挙げられる。また、これらの症状によって不眠やめまい、動悸などの身体症状が現れることもある。

一方、行動面の症状としては、万引きや暴力などの素行の障害、摂食行動の異常、遅刻や無断欠勤など社会生活を営むうえで他者にとっても障害になるような行為があらわれることがある。

しかし、これらのさまざまな症状は、ストレスがなくなると改善されるのが特徴で、通常、ストレスが消失してから6か月以上症状が続くことはないとされている。

① 検査・診断

適応障害の診断には、血液検査や画像検査による明確な基準はなく、症状の現れ方や時期、ストレスとの関係などを丁寧に問診していくことが必要となる。

また、適応障害はうつ病や不安障害など、そのほかの脳の器質的疾患を除外したうえで診断されるため、それらの除外のために心理検査や脳の病変をチェックするCT検査、MRI検査、脳波検査などが行われることがある。

そのほかにも、抑うつ気分を生じる甲状腺機能低下症などの内科的疾患を除外するために血液検査が行われる場合もある。

② 治療

適応障害の治療には、主に3つの治療がある。

・ストレス因の除去

まずは症状の原因に対して環境調整することが必要になる。仕事が原因であれば休職や異動をしたり、暴力をふるう恋人が原因であれば連絡を絶ち、周囲にも現在の居場所を教えないように協力を願ったりすることによってストレス因を取り除いたり回避する。

家族のように離れたり動かしたりするのが難しいものは次のステップが必要になる。

・本人の適応力を高める

ストレス因に対する患者本人の受け止め方にはある程度のパターンがあり、そのパターンに沿ってアプローチする行動認知療法と、現在抱えている問題と症状自体に焦点を当てて、協同的に解決方法を見出していく問題解決療法を行う。治療を受ける人自身が主体的に取り組むことが大切。

・情緒面や行動面への介入

うつ症状があれば抗うつ剤を、不安や不眠にも薬物療法が有効であるが、適応障害の薬物療法は対症療法であり、根本的な治療のためには環境調整やカウンセリングが重要である。

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